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2009年9月17日掲載

東京異国物語 vol.1 ストレスの多い日本社会にあって心身の健康をめざす“気功”を広める「禅密気功」 気功師 朱 剛(しゅ・ごう)さん

(取材・文 長尾弥生

気功は手軽な伝統健康法。背骨ゆらしが第一歩。

禅密気功教室の様子

基礎的な功法「蠕動(じゅうどう)」で背骨をしなやかに。

イメージしてー。きれいな水がありますなー。
手をうごかーして、中に入りましたらー、
気持ちがすずしーくなってー、おちつきますなー。
気持ちいいなー。
つぎ。頭の上に太陽をイメージしてー。
あーったかい気が流れてきてー、
からだ全体、あーったかーくなってますなー。

朱剛さんの子守唄のような声が教室に響くなか、初級コースの参加者は目をつぶり、体をゆらゆら動かしている。手を波のように大きく揺らす人、小さく動く人、それぞれが朱さんの声を体で受けとめて、自分の感じるままに揺れている。

この動きが、気功の第一歩である「背骨ゆらゆら健康法」だ。指導する朱さんは、本当に水と戯れているかのような動きを見せ、気持ちよさそうな表情を浮かべている。

朱 剛(しゅ・ごう)さん「この運動では、体の根幹である背骨をゆっくりとやわらかく動かします。私たちが"凝(こ)ったなぁ"と感じるのは、たいてい背骨の両側ですね。その凝った筋肉を緩和するのです。背骨は一つひとつが内臓と密接につながっているので、内臓の按摩(あんま)効果もあるんですよ」

見よう見まねで背骨を意識しながら、ゆっくり動いてみる。簡単そうに見える動きだが、じつはきつい。

「2時間のコースが終わると、私もけっこう汗をかいていますよ。これは"有酸素運動"でもあります。人間にとって必要な運動ですね」と、朱さん。

背骨を前後左右なめらかに動かせるようになれば、内臓の働きも活発になり、背骨の中を通る神経や体液もスムーズに流れて免疫力や治癒力が高まる。このように体の調子を自ら整えることを、気功では「体を養う」と考えるのだそうだ。

両手をかざして「ハーッ」というような、超能力を伴う気功のイメージとは随分違う。朱さんがめざしているのは、「"誰もができる健康法"である気功を通じて、心と体を健やかにすること」なのだ。

中国4000年の英知が詰まった「禅密気功」

禅密気功

自然のエネルギー(=外気)を取り入れる「吐納気功」の中の動作。

気功は、4000年の歴史を誇る中国伝統の健康法だ。長い歴史の間に枝分かれした流派は2000以上に及ぶが、朱さんが伝承する「禅密気功」は国が認める20の流派の一つ。代表的な流派として、世界中に400万人もの愛好者がいる。

禅密気功の真髄は、意識のかたまりである「意念」を自分の中で自在に動かせるように訓練すること。練習を重ねると、人間が本来持っている無限のエネルギーとされる「気」の流れを感じ、動かせるようになる。そして体の隅々にまで行き渡らせることができれば、心身にエネルギーが満ちて、気持ちも明るく健康になる、というものだ。

こうした訓練を行うために必要とされる体づくりが、「背骨ゆらゆら健康法」だ。背骨をしなやかに鍛え、体をリラックスさせて、集中力を高めやすい状態に整える。

とはいえ、「意識の訓練と言われても、抽象的でよくわからない」というのが本音だろう。だからこそ、朱さんが大切にしているのは「体験」だ。意識のかたまりとはどんな感覚か、どうやって自分の中でイメージを持つか、どうやって意念をつかみ、気を動かすか。

禅密気功・朱 剛(しゅ・ごう)さん

「蠕動(じゅうどう)」の動きで背骨のしなやかさをみせてくれる朱さん。

「言葉にするとあいまいですね。でも、訓練していけば、必ず確かな感覚をつかむことができます。その感覚を、皆さんと一緒に体験しながら学んでいきたいのです」

朱さんの指導のもと、これまでに多くの人が地道に練習を重ね、その技術を習得してきた。「そうすると、みんな穏やかーな表情になるんですよ」と、朱さんがうれしそうに教えてくれた。